風邪予防は、「手洗い」「うがい」を熱心にしないこと
薬用せっけんは避けよう
インフルエンザや風邪の季節になると「手洗い」「うがい」が推奨されます。それは手や喉に付着した細菌やウイルスを体の中にいれないように予防するため。私も手洗いやうがいはします。でも、石鹸やうがい薬を使うことはありません。水洗いで十分だからです。
私たちの体には、「常在菌」というさまざまな菌がすんでいます。腸には乳酸菌やビフィズス菌、大腸菌などの腸内細菌たち、そして手にも表皮ブドウ球菌やアクネ菌などの皮膚常在菌たちがいて、生態系を築いています。菌たちは皮膚から出る脂質をエサにして脂肪酸をつくり出します。この脂肪酸は酸性のバリアです。細菌やウイルスの多くは、酸性の場所ではいきられません。よって常在菌のつくる酸性のバリアがあれば、風邪のウイルスや病原菌は長く皮膚にくっついていられなくなります。このようにして、常在菌たちが私たちの体を守ってくれているのです。
ところが、手洗い時、石鹸で1回洗うと、皮膚常在菌の90%が洗い流されます。残った10%の菌が頑張って増殖しても、元のよい状態に戻るには、なんと12時間もかかります。ですから、1日2回までは石鹸を使ってもよいですが、それ以上はいけません。特に薬用石鹸はおすすめしません。常在菌を皆殺しにするからです。こうなっては、12時間では元にもどりません。その結果、皮膚常在菌は脂肪酸の皮膚膜を作れなくなり、角質層にすきまができ、皮膚はカサカサ状態になります。このカサカサ肌に風邪のウイルスやアレルゲンがつきやすくなります。
皮膚表面からのケアで急場をしのぐ必要も出てきます。
腸内細菌をいじめる殺菌剤はNG
最近はうがい薬にも強い殺菌作用入りのものがあります。殺菌剤入りの口腔ケア製品も広く出回っています。これらを習慣的に使っていると粘膜を傷つけてしまう恐れがあります。しかも、こうした殺菌剤が腸の中に入っていくことで、腸内細菌たちはダメージを受け、著しく減っていきます。
近年、インフルエンザなどの感染症で重症化する人が多いのは、このように普段から菌を排除しすぎて暮らしているため、免疫力が総じて低下しているからではないかとみています。
手や喉、皮膚、そして腸内に多種多様な菌群が育っていれば、1つの菌だけが猛威をふるうことは難しくなります。
ですから普段の手洗いに石鹸を頻繁に使うのはさけましょう。流水で10秒も洗えば、手についたウイルスは流せます。うがいだって水で十分です。多様な菌との共生が、病原菌に強い身体をつくっているのですから。
profile
藤田 紘一郎(ふじたこういちろう)[1939ー2021]
藤田 紘一郎(ふじたこういちろう)[1939ー2021]
東京医科歯科大学名誉教授、医学博士。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。マラリア、フィラリアなどの免疫研究のかたわら、「寄生虫体内アレルゲン」、「ATLウイルスの電線経路」の発見など多くの業績をあげる。また免疫学を下敷きにしたユニークなエッセイストとしても活躍。著書に『笑うカイチュウ』(講談社・科学出版賞)、『清潔はビョーキだ』(朝日文庫)、『腸内革命』(海竜社)、『病気にならない乳酸菌生活』(PHP文庫)、『腸で寿命を延ばす人、縮める人』(ワニブックス)など多数
当社は“腸の大切さをより多くの方にお伝えしたい”という先生のご意思に共感し、先生が長年続けてこられた啓蒙活動を少しでも引き継ぐべく活動してまいります。(藤田先生のご家族にもご了承いただいております)
なお、藤田先生のご出身大学であり、名誉教授も務められていた東京医科歯科大学の基金の理念にも賛同し、医学生育成にも微力ながら支援してまいります。
株式会社ビーアンドエス・コーポレーション
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