第5章 腸のはたらき
解毒の基本は肝臓
最近、健康生活のキーワードとして定着してきたデトックス(解毒)。よく耳にする言葉ではないでしょうか。解毒とは、体内に入ってきた、あるいは溜まった有害物質を無毒化して体の外に排出することですが、我々にはもともとこの解毒の機能が備わっています。解毒を担う器官は、主に肝臓や腎臓です。お酒などのアルコールや防腐剤などの食品添加物はもちろん、薬として摂る薬剤でさえ、体にとっては有害物質です。肝臓はこうした有害物質を分解・処理して無害なものに変えて体の外に排出します。また、体外から入ってくる有害物質だけでなく、体内で発生する有害物質に対しても働きます。
例えば、アンモニアです。アンモニアは、食べたものが消化・吸収される時に発生しますが、肝臓で尿素という無害なものに変換されます。
腸は肝臓の重要なサポーター
解毒を担う肝臓は、毎日の飲食で休む間もなく働き続けています。この働き者の肝臓をサポートしているのが、実は腸です。消化・吸収といったメインの機能の他に、肝臓の負担を軽減させている器官なのです。体外からの有害物質が最初に体とコンタクトするところは腸であり、また体内に侵入してくる場所も腸です。腸は、こうした体外からやってくる有害物質をブロックするバリア器官として働いています。腸でブロックできなかった有害物質が肝臓に運ばれ解毒処理されることになります。つまり、腸がきちんと機能しないと肝臓には大量の有害物質が流れ込むことになってしまいます。
腸の役割(バリア機能)
食べ物などに混入する有害物質(発がん物質、内分泌かく乱物質)は、小腸で栄養素と共に吸収されてしまいます。中でも油に溶ける物質(脂溶性物質)はタチが悪く、拡散的に腸上皮細胞に入り込んできます。しかし、腸上皮細胞には、解毒・排出機能が備わっています。次のような手順で細胞に進入してきた有害物質を処理します。
(1)有害物質の検知
腸上皮細胞には様々な有害物質を検知するセンサー(受容体)が備わっています。
(2)解毒酵素の誘導
有害物質を検知すると、それに合わせて解毒酵素を誘導します。
(3)無毒化
誘導された解毒酵素が有害物質を無毒化します。
(4)細胞外への排出
無毒化された有害物質は、専用の排出口(トランスポーター)から細胞外へと排出されます。
このような一連の解毒機構が、体の門番として腸に備わっています。腸は有害物質に対する第一の砦なのです。
解毒と腸内細菌
腸内には200種、100兆個以上の細菌がすんでおり、我々の消化吸収の手助けをしてくれています。なくてはならない腸内細菌ですが、中には、タンパク質を分解してアンモニアやニトロソアミン、フェノール、インドールなど人体にとって有害な物質を産生する細菌もいます。有害物質を作る細菌だからといって、「悪玉菌だ」というレッテルを貼ってはいけません。我々の代謝の手助けをしてくれたり、他の細菌に栄養を提供しているのです。
一方でこれらの有害物質を代謝する細菌もすんでいます。体内毒素を発生させるのもそれを解毒するのも腸内細菌ということです。
しかし、有害物質を作る細菌だけが偏って増えてしまったり、有害物質を代謝する細菌だけが減ってしまうと、有害物質も増えて、肝臓の負担が増大してしまいます。大事なのは、細菌のバランスで、もちつもたれつのバランスを維持することが、体内毒素を減らすことにつながります。
クサイおならは要注意
腸でつくられるガスがおならとして出ます。腸内細菌が食べ物を分解するときに出すガスの多くは、水素やメタンでほとんど臭いはありません。腸内細菌バランスが乱れてアンモニアや硫化水素、インドールなどのガスが偏ってでるとクサイおならになります。おならの臭いは、腸内細菌バランスを映し出す鏡です。普段よりクサイと思ったら、食生活を見直すことをおすすめします。
ただ、現代人は忙しい人がほとんど。手軽に、効率よく腸内バランスをととのえたいなら、「乳酸菌生成エキス」がおすすめです。指紋のように1人ひとり違う腸内細菌を増やし、その構成バランスをととのえます。
下痢も優れた解毒作用
食事中に有害なものが入ってくると、腸はすぐそれを検知して多量の腸液を分泌し、それを体外に素早く排除しようとします。いわゆる下痢です。これも我々に備わった最も応答の早い解毒の1つ。むやみに下痢止めをすぐ飲むのも考えものです。薬が必要な下痢かそうでもないケースか考えてみるべきでしょう。