腸内フローラをととのえよう
ドクターインタビュー2:皮膚と腸の関係とは?
- 【1】皮膚トラブル…それは体の内側からのサインかも
- 【2】教えて 東先生!皮膚と腸のつながりって?
- 【3】東先生に教わる 今日からできる皮膚疾患症状緩和のためにできること
【1】皮膚トラブル…それは体の内側からのサインかも
「肌に炎症やかゆみ、湿疹が出て、毎日塗り薬を塗ってもなかなか良くならない…」
「塗り薬で一時的に治まったけれど、すぐに繰り返してしまう…」
このような皮膚トラブルの経験はありませんか?もしかしたら、それは、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患かもしれません。
アトピー性皮膚炎とは、皮膚に強いかゆみのある湿疹が出て、症状が悪くなったり、良くなったりを繰り返す皮膚疾患です。アレルギーがある人がなりやすく、発症には腸内環境の状態が大きく関係していると言われています。
【2】教えて 東先生!皮膚と腸の関係って?
東洋医学や栄養医学、点滴療法などをとりいれ、「体にやさしく安心できる医療」をモットーに、日々多くの患者さんの診療、治療を行っている東先生。皮膚疾患の治療には腸からの取り組みが大事だと話されています。そこで“皮膚と腸の関係”について伺いました。
●東先生の医院には、皮膚に悩みを持つ患者さんも数多く来院されるそうですね。
はい。当院には、さまざまな疾患を抱える患者さんが通院していますが、アトピー性皮膚炎や乾癬などの皮膚疾患にお悩みの患者さんも多くいらっしゃいます。
私自身が皮膚疾患の患者さん一人ひとりと向き合って診察していく中で実感したことは、口から入ったものが皮膚に影響を与えているということ。体の外側にある皮膚と体内の腸を含む消化管は、外と内で別物のような感覚がある方がいらっしゃるかもしれませんが、当然のことながら、連続した一つの個体として外部(皮膚)と内部(消化管)が密接につながり、反応しあっています。ですから、患者さんが抱える皮膚疾患の症状の重さは、腸をはじめとする消化管の状態とリンクするという点に気をつけながら、患者さんへの食事指導をしております。
特にアレルギー反応が関係する皮膚疾患の治療には、塗り薬などの外側からの治療とあわせて、内側、特に腸からのアプローチが非常に重要だと思います。
状態の良い腸とは、腸内フローラ、いわゆる腸内細菌叢のバランスが良い状態だといえます。ではなぜ、腸内フローラのバランスが皮膚疾患の症状に影響を与えるのでしょうか?それは、腸の免疫の働きが大きく関係しているからです。
免疫とは、病気を防いだり体を治そうとする、私たちの体に備わった防衛機能です。「自分であるか否か」つまり「自己」と「非自己」を見分けて、「非自己」と判断した有害なもの(ウイルスや細菌など)を攻撃して体外に排除する働きをします。腸には全身の免疫細胞の7割が集まっているので、腸の免疫の働きは全身の健康に関わります。さらに、有害なものを撃退するだけでなく、栄養素など、「非自己」であっても自身にとって有益なものを選び取って体内に受け入れるという働きもあり、食品によるアレルギーを抑える仕組みとして免疫の大きな役割の一つといえます。
腸には、消化管を通して、外から良い食べ物も悪い食べ物も入ってきます。ですから腸には、必要なものを取り込み、有害なものは不用意に取り込まないよう、免疫細胞が集中して存在しているのです。
これらの免疫の働きは、腸にいる免疫細胞と腸内細菌たちがお互いに協力し合うことで成り立っています。ですが、腸内フローラのバランスが崩れて協力体制がとれなくなり免疫細胞が暴走してしまうと、体にとって無害な物質にまで過剰反応を起こし、その結果、自分の体まで攻撃してしまいます。これが、いわゆるアレルギー反応や自己免疫疾患です。
アトピー性皮膚炎や乾癬などの皮膚疾患には、この免疫の暴走が深く関わっているといわれています。症状を緩和し、良い状態にしたいのであれば、腸内フローラのバランスをととのえて、腸内環境を良い状態で保つことが重要です。
※腸の免疫の働きについて詳しく知りたい方はこちら
そうですね。皆さまも体感として、便の調子が良いと肌の調子が良いという感覚はあると思いますが、皮膚疾患も同様です。腸内フローラをととのえることで、皮膚疾患が快方に向かうことでしょう。
もちろん、お悩みの症状がこれ以上悪化しないよう、塗り薬などの外からのケアが大切なことは言うまでもありません。皮膚疾患の治療には、外と内、全身からトータルで取り組んでいくことで、症状緩和につながる可能性が高まります。
腸内環境をととのえるというとヨーグルトを手に取る方が多いと思いますが、特に皮膚疾患でお悩みの方にはあまりオススメできません。ヨーグルトに含まれる乳タンパクや糖分が皮膚疾患の症状悪化につながることもあるからです。
腸内環境をととのえるには、余分なものをそぎ落として腸に直接届けるのが理想です。その点では、乳酸菌生成エキスは腸内フローラの改善に直接アプローチできるので、いいですね。当院でも、アトピー性皮膚炎や乾癬という皮膚疾患の患者さんの治療に使用し、良い結果が出ています。
【東先生の“乾癬”改善症例が乾癬患者の生活サポートマガジン
「PS JAPN vol.26」に掲載されました】
免疫系の全身疾患 “乾癬”とは?
乾癬は、炎症と角質化を伴う疾患で、主に皮膚に症状がでます。
乾癬の主な症状としては、
- ・皮膚が赤くなる「紅斑(こうはん)」
- ・皮膚が盛り上がる「浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)」
- ・盛り上がった皮膚の表面を覆う銀白色の細かいかさぶた「鱗屑(りんせつ)」
- ・鱗屑がボロボロと剥がれ落ちる「落屑(らくせつ)」
などです。
なぜ乾癬を発症してしまうのか、原因はまだ解明されていませんが、乾癬は体内の免疫に深く関係する全身性の疾患です。病状の安定には、食生活や運動などの生活習慣、睡眠時間などの改善や免疫と深い関係がある腸内環境の改善が有効だと考えられています。
【3】東先生に教わる 今日からできる皮膚疾患症状緩和のためにできること
「繰り返す皮膚疾患を何とかしたい!少しでも症状を軽くしたい!」
そのような時には、腸内環境をととのえるためにも食事などの生活習慣を変えていくことが大切です。そこで、皮膚疾患の治療時に東先生が行っている食事指導の一部を教えていただきました。
肌の修復時に必要なビタミンB群。ですが、お酒を摂取すると、そのビタミンB群がアルコールの分解に使われてしまうので、お酒は控えるようにしましょう。
タバコも同様です。せっかく治したい気持ちがあって治療を始めても、タバコを吸い続けていてはなかなか快方には向かいません。体の健康にとっては、タバコは百害あって一利なしです。この機会に禁煙してみてはいかがでしょうか?
習慣的に食べているパン(小麦)や乳製品が皮膚疾患の引き金になっていたり、腸の消化吸収への負担になっていることがあります。和食中心でまずは2週間、そのまま3カ月ほど続けていくと嗜好が変わってきたり、調子が良いというような体感を覚える方が多いです。
また、洋菓子は砂糖や卵、小麦が使われているものが多く、腸にとって負担になりやすいので、できれば、記念日などの特別な日に限定しましょう。和菓子のおせんべいやお餅ならば、含まれる砂糖は比較的少ないので、皮膚に炎症を起こしにくいと考えられます。
アレルギー検査(IgE抗体検査)で抗体を持っていなかった食べものでも、長期間にわたって食べ続けていたり、大量に食べていると、ゆるやかにアレルギー反応を起こす遅延型(IgG抗体型)アレルギーを発症している場合があります。この場合、急なアレルギー反応を起こしていないので、本人はアレルギーを起こしていることに気づいておらず、知らず知らずのうちに皮膚疾患の悪化を招いていることも。
なかなか治らないなと思ったら、今食べているものをもう1度見直して、毎日欠かさず食べているものや、一度に大量に摂取している食べ物があったら、できれば3カ月休んでみましょう。そうすることで、何が皮膚疾患の引き金になっているか、原因がわかるかもしれません。
教えていただいた方
もりの医院 副院長
東 照代(ひがし てるよ)先生
「体にやさしく安心できる医療」を目指し、一人ひとりの患者に向き合い、東洋医学や栄養医学、点滴療法も取り入れた診療、治療を行う。診療科目は、一般内科、漢方内科、消化器内科、老年神経内科、リハビリテーション科。
profile
腸まもる(45歳)
腸まもる(45歳)
某研究所で、腸内細菌研究にいそしむ腸オタク。腸の大切さを啓蒙していくことを喜びとしている。